シニア向け携帯電話スマートフォンの人気の秘密 [IT・通信]

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京セラの携帯通信機器事業が、30周年を迎えた。

ユーザーのさまざまなニーズに応えることを掲げ、ビジネスに取り組んできた。

京セラの携帯通信機器事業が注力してきた事業のひとつに、シニア向けの携帯電話やスマートフォンがある。

すでに累計出荷台数は1200万台を突破。

折りたたみ携帯電話からスマホまで、幅広いラインナップがシニアからの高い支持を得ている。
ところが発売当初は「市場に受け入れられるか不安があったという。

今でこそ『シニア向けケータイ』は一般的な商品になっていますが、発売当時は存在さえしていなかった。

本当にニーズが捉えられているのか、不安があったそうです。

 高齢者が携帯を使うときには、その機能を使えているということで社会と繋がっていると感じる。

非常に前向きに携帯講座などにも出かけ学びながら実践しています。

セミナーも講座で、電話、メール、絵文字などすこしずつレベルアップしていくことに喜びを感じる高齢者が多いです。

デジタルテクノロジーは進化し続けています。

この流れに疎いユーザーがその恩恵を受けれるように、デジタルから普段は遠い方々も含めて全てのユーザーに付加価値を受けることができる世の中であってほしい。

様々な機能を拡充していく製品が増加している過程で、一定層向けに機能を絞った製品は今後もデジタル化が加速する中で必要担っていくでしょう。












「1989年の『携帯電話』初号機の発売以来、ユーザーに通信端末を届けたい、その一心で開発を進めてきました。
そこで、携帯電話を敬遠していたシニアにも使えるよう、2004年に初めてシニア向け端末を世に出したのですが、予想以上にヒットしました。

このヒット作こそ、ツーカーと共同企画した画面のない携帯電話「ツーカーS」だ。

「ツーカーS」が開発された2004年当時、写真・動画付きメールの普及や、モバイル決済の導入が決定するなど、携帯端末は高機能化の一途をたどっていた。
しかし、すべての人がテクノロジーの最前線を追いかけたいとは限らない。デジタルに不安や抵抗感を持つシニアであればなおさらだ。
もっとシンプルで、使いやすい携帯電話を作れないか。その発想から生まれた「ツーカーS」の用途は、ワンタッチで操作可能な発着信機能のみ。
画面をはじめ、電話帳、マナーモード、発着信履歴など、それ以外の一切がない。
そのシンプルさが、高齢者の共感を得たのだ。同じく通信事業戦略部の原田正夫氏は、当時をこう振り返る。

「高機能ラインがよしとされていた時代でしたが、京セラの『すべての人々に寄り添いたい』という大義を突き詰めた結果、隠れたニーズを掘り起こすことができたのだと思います。
万人に受け入れられる、マス向けの商品ももちろん必要ですが、一方で小さな声を拾っていくこともメーカーの使命。
そう考えて、現在まで事業を続けています」(原田氏)


■新機能をシニア向けに「再解釈」
「ツーカーS」のヒットを受け、強いニーズを確信した京セラは、その後も「あえて」多くの機能を搭載しない、シンプルで使いやすい端末作りに取り組んだ。

以来、発売から16年で出荷したシニア向け端末は、20機種以上にのぼる。

これまで販売された京セラの携帯電話の一部。
無論、単に機能を削ぎ落としてシンプルにしていくだけでは、ユーザーのニーズに応え続けることはできない。

京セラは、幾度となく市場調査とテストを繰り返して、商品に新たなエッセンスを加えてきた。
たとえば、「見た目」もそのひとつだ。
「機能もビジュアルもシンプルな端末は好まれますが、『いかにも高齢者向け』な見た目の端末は、あまり使いたくない、というお客様の声もありました。
言われてみれば、そうですよね」(伊東氏)

しかし、細かい部分に目を向けると、ユーザーの行動特性に沿って設計されていることがわかる。

「近年は、スマホ本体のボタンをなくしていくのがトレンドですが、シニア向け端末では、ボタンは残すようにしています。
これは、押している実感のないタッチパネル操作はシニアにとって難しいことが、ユーザーテストの過程でわかったからです」(原田氏)

スマホの本体の下部に、押し込み式のボタンがある。
もちろん、こうしたユーザーへの配慮は、外見のみに限らない。搭載されているアプリケーションにも、シニア向けならではの仕掛けがある。
「カナ入力をする際、普通のスマホは何度か『入力切り替え』の文字盤を押すのがセオリーですが、この操作は直感的にわかりにくい。
実際にユーザーが操作する様子を観察すると、いつもカナの入力ボタンを探していました。
そこで、文字種の切り替えボタンを独立させ、キーボード内に設置しました」(原田氏)

文字種の切り替えは、キーボードからワンタッチで手軽だ(写真左の端末)。
このように、先端機種に追加される新要素を一切排除するのではなく、シニア向けに「再解釈」して搭載する。
だからこそ実現できる、洗練されたインターフェースが、ユーザーからの支持を得ているのだ。



■メーカーが街を「つなげる」理由
なぜ、京セラはユーザーのニーズをこのように的確に捉えることができるのか。
その理由を、原田氏は「ユーザーとの『直接』の接点を設けているからだ」と説明する。
「私たちはメーカーですから、商品のヒアリング調査やユーザーテストの機会は頻繁に設けています。
それに加えて地域の福祉施設と連携し、高齢者向けの『スマホ教室』を開催しています。
テストの場だと、ユーザー自身も身構えてしまうんですね。それでは『よそゆき』の回答しか得られない。
でも、『スマホ教室』というフランクな場で出会うことで、ユーザーとの距離も縮まります。
すると、普段どのようにユーザーがスマホを触っているのか、どこでつまずいているのかを、自然に知ることができるんです」(原田氏)

実施数は、累計30回。250人近くのユーザーとリアルに言葉を交わし、彼らの動向や反応を丁寧に確認していく。そこで見えた「気づき」が、製品の改良へとつながるのだ。
さらに、直接的な接点を作る意義は、商品開発にとどまらない。
「そもそも、我々の取り組んでいる通信事業はお客様同士のコミュニケーションを円滑にするための仕事。
ならば、携帯電話で通信環境を提供するだけではなく、地域のコミュニティを形成し、人々のふれあいの機会を設ける。
それも私たちのミッションのひとつだと考えています」(伊東氏)

実際、京セラのシニア向けスマホ教室をきっかけに、地域で「友だちができた」と喜びの声をもらうことも多いという。
京セラの取り組みは、端末によってシニアと社会をつなぐだけでなく、リアルな地域の「つながり」の醸成にも貢献しているのだ。


■通信できる「鏡」は実現するのか
こうした取り組みを続け、京セラは通信キャリアと二人三脚で協業しつつ、良質な商品をユーザーに届けてきた。
しかし、スマホや携帯電話がコモディティ化した現在、単に高機能を追い求めるだけでは他社との差別化が難しい。
もはや、「いいケータイ」を作れば選ばれる時代は終わりつつあるのだ。
挑戦なくして、進歩なし。次世代のメーカーに求められるのは、「良い商品」の先にある「顧客体験」までを包括的にデザインする姿勢だ。
「通信事業のミッションは、お客様と社会を『つなげる』こと。
ならば、その方法は携帯端末に限らないはずです。超高齢社会を迎えて、多様なアプローチから通信環境を支えていこうと決めました」(原田氏)

そこで2020年、京セラは、未来の通信コンセプト「Social Gate」を発表した。
「我々が掲げる『Social Gate』には、シニアを含めたすべての人と社会をつなぐ『扉』になりたい、という意味が込められています。
それを実現するためには、IoTプロダクトの開発はもちろん、地域の行政機関やパートナー企業など、他業種とも協業しながら街全体で変革を起こしていく必要がある。その準備を、今まさに進めています。
将来的には、通信機能のついた『ディスプレイ』や、体調管理に活用できる『センサー付きの鏡』を開発しよう、とも考えていますよ」(伊東氏)

2020年には日本でも5Gの提供が始まり、通信環境は日々めまぐるしく変化している。
こうした変化に適応するためには、単なる「携帯電話メーカー」ではなく、「通信で社会に貢献するメーカー」へと変化しなくてはならない。
そんな京セラの決意が、「Social Gate」というコンセプトに表れているのだ。
今後も、超高齢社会の加速が予測される日本。生産年齢人口が減少し、年金や介護など、社会問題も山積みだ。
そんな中、京セラはシニアと社会の「つながり」を作ることが、まずは解決の一歩になると考えている。
シニア向け事業に長年取り組んできた同社は、超高齢社会においても、全世代を「つなぐ」存在へと進化できるのか。その挑戦は、始まったばかりだ。
(取材・文:高橋智香 


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